アルベニスの録音(10月10、11、15、16日)
2007-10-28 Sun 18:57
10月6日に帰国した。スカンジナビア航空のコペンハーゲン(デンマーク語ではケベンハウン)経由で、乗り継ぎが5時間半もあったので、市内観光をした。デンマークは初めてで、現地の言葉もお金も知らずに街に出たので、はじめは少し戸惑った(普段知らない国に行く時は簡単な挨拶とお金について事前勉強するようにしている)。

中央駅から市庁舎、歩行者天国(ストロイエ)を通り、海岸の傍で昼食を取った。美味しい海の幸の料理を食べた。そのまま北へ進むと、有名な人魚姫の像があると聞いて、数キロ歩いた。実際の像は人間の等身大とあまり変わりなく、少しあっけなかったが、一応主要な観光名所を見られたので満足だった。
デンマーク料理
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再び機上すると、少し喉が痛くなった。「やばいっ」と思ってこまめに水分を取り、のどあめをなめたりしていたのだが、次第に体も熱くなっていく様子。飛行機の乾燥で、また扁桃腺が腫れてしまった。(睡眠不足の上無理して観光したのもいけなかったのだろう…)

とにかく東京の実家に着いてからは休養を取ることに専念し、あまり練習ができなかった。でも、録音は10日から始まる予定だったので、気持ちは焦るばかりでなかなか眠れない。録音前日の夜も、まだ38度の熱があった。
録音はコンサートと違い、集中を持続する時間が長いので、その分体力と神経も使う。しかも、今回はCD2枚分の約140分のプログラム!あいだに3日間の中休みが入るとはいえ、4日間ですべてを録音するのは、体調不良の僕にとってはかなりの挑戦だった。

録音会場は埼玉県和光市にある市民文化会館サンアゼリアの大ホール。自宅からは一時間近くかかるので、前日の夜移動してホテルに滞在した。10日は朝9時入りでピアノ選定、ホテルでまた少し休み、11時半から音合わせ、練習、そして昼食後録音という形で進んだ。
幸い録音スタッフは皆さん親切で、特にディレクターの佐藤さんは非常に気がきく方で、こちらが言わなくてもいろいろ用意して下さり、僕の体調に合わせて、休み休みやらせてくれた。また、ホールの音響とピアノが素晴らしく、弾いている間ずっと幸せだった。そして譜めくり兼アドヴァイザーとして強力な助っ人を準備していたので、演奏に対しても皆が納得行くまで、深く追求できた。日に日に体調も良くなり、後半の録音は手際よく進んだ。皆さんの協力のお陰で無事に終えることができ、感謝の気持ちで一杯だ。ちなみに今回の録音編集は、12月の日本滞在中に僕も立ち合うことができるので、そこでも妥協なしにつきつめて行きたいと思う。

録音後も予定は詰まっていたが、3日ほど姉家族がいる北軽井沢で休暇を過ごし、姉の子どもたちともめいっぱい遊んでリフレッシュした。また、松茸や秋刀魚をたらふく食べて、日本の秋を満喫した!
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トゥールーズで(9月25日)
2007-10-23 Tue 16:48
24日にトゥールーズに飛んだ。ここは、フランス南西部に位置する美しい街として有名なので、今回初めて訪れることを前々から楽しみにしていた。しかも、ここで演奏させていただくピアノ・オ・ジャコバンは、フランスにある最古の、由緒あるピアノ音楽祭だ。過去にも、アルゲリッチ、ポリーニ、ツィメルマン、チッコリーニの各氏など、一流ピアニストが沢山出演している。

ここで、日本人の僕が武満さんのオマージュコンサートをさせていただけたのは、この上なく光栄なことだった。会場はトゥールーズにある現代美術館で、そこの館長さんと親しい日本の画家、白髪一雄(しらがかずお)氏の「原点」という大きな作品をステージ上に吊るし、その横で弾かせて頂いた。絵画とのコラボレーションはこれが初めてだった。(白髪氏は今回いらっしゃれなかったので、お目にかかれなかったのは残念だった。)

200席ある会場が満席になり、温かい聴衆に迎えられ弾くことができた。パリで同じプログラムを一度弾いていたこともあり、トークもより自然にスムーズにできたと思う。
終演後ロビーでCD販売がされ、30枚用意していたが、5分足らずで完売した、と主催者から聞かされ驚いてしまった。

この地で、とても良い経験をさせていただき、感謝の思いで一杯だ。
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レオン・フライシャー先生のマスタークラス(9月22日、23日)
2007-10-23 Tue 15:54
パリの恩師ビュッケ先生と親交のあるアメリカのピアニスト、レオン・フライシャー氏が先生宅でマスタークラスをされた。4年前、僕はフライシャー先生の室内楽レッスンをヴィルクローズの講習会で受け、彼の芯の太い音、知識の深さ、そして厳しさと温かさを併せ持つその大きな人柄に感銘を受けた。先生は16歳の若さでエリザベート王妃国際コンクールで優勝し、一躍世界の舞台で活躍されたが、絶頂期でもあった30代後半で右手を故障し、以後指揮と左手だけのレパートリーで活動されていた。しかし長年のリハビリが功を奏し、近年また両手で弾き始め、その苦労の末に磨かれた演奏が多くの人に感動を与えている。

今回久しぶりにお会いし、演奏を聴いていただいて本当に嬉しかった。ショパンのアンダンテスピアナートと華麗なる大ポロネーズを見ていただいたが、オーケストラの指揮も沢山経験されている先生の、リズムと音のバランスに対する追求はさすがに深かった。最後に、少し僕の活動を報告すると喜んでくださり、"Good luck!"と言って大きくハグしてくださった。
フライシャー先生と

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"Autour de Takemitsu"初公演!(9月20日)
2007-10-23 Tue 15:32
ベルリンでのサロンコンサート後、6日後に迫ったパリ公演、武満徹のCD発売記念コンサートに向けて毎晩遅くまでフランス語の原稿を準備していたら、また体調を崩してしまった。パリへ発つ前日にも38度以上あったので、今回は医者に応急処置をしてもらった。出発の18日の午前中も、同じ大学で学ぶフランス人の友だちに家に来てもらい原稿の訂正やアドヴァイスをしてもらった。喉の痛みと、そのためコンサートで原稿を読めるかどうかという不安を抱えつつ、パリへ発った。

今回のプログラムは、"Autour de Takemitsu"(〜武満を中心に〜)と題し、武満さんの音楽や人生背景の解説をしながら、彼のピアノ曲と彼に影響を与えた作曲家の作品を弾いた。以前フランスで、このような“一人の作曲家に焦点を当てつつ、それと関連のある作曲家を並べたトークコンサート”を聴いて、聴衆(僕自身も含め)がその作曲家への理解と親近感を深めることができ、彼の世界へすーっと引き込まれるのを見て、是非自分もこういうものをやりたい!と思っていた。

コンサートには、恩師のリグット先生、ビュッケ先生の他、フランスでお世話になった方々が来てくださり、それが僕にとってこの上なく心強く、本番前から胸が熱くなった。薬のお陰で喉の痛みは減少し、会場が小さかったので、なんとかトークも入れることができた。フランス語でのトークコンサートは初めてだったが、予想以上の反響で本当に嬉しかった。

アンコールには、武満さんが戦争中に聴いて音楽に目覚めるきっかけとなった、フランスのシャンソン「聞かせてよ、愛の言葉を」を僕がピアノソロに編曲したものを弾いた。編曲はいたって単純なものだったが、会場は大いに沸いた。

12月には、日本でもこれよりさらに充実したプログラムで公演をするので、是非多くの方に聴いていただけたらと思う。詳しくはこちら
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ピアノサロン・クリストフォリで(9月14日)
2007-10-18 Thu 00:44
10月に控えるアルベニスの録音は、CD2枚分なのでとにかく全ての曲をむらなく仕上げるのが大変だ。組曲『イベリア』は演奏会で何度も取り上げたが、その他の小品は抜粋でアンコールなどで弾くぐらいだったので、一度それら全てを人前で弾く機会が欲しかった。ベルリンの自宅近くにアンティークピアノの店があり、そこでは毎週サロンコンサートが行われている。以前オーナーが僕にも弾いて欲しいと言ってくださったので、急ではあったが、9月14日にそこでアルベニスの小品を弾かせていただいた。

その店には19世紀のエラールが2台あり、オーナーが是非それでラヴェルを聴きたいと言ったので、同じ大学で勉強している友人と、後半に2台編曲版ラヴェルのピアノ協奏曲も弾いた(僕は伴奏)。エラールの楽器は鍵盤が通常より短いので、音をはずしそうになり最初は怖かった。しかも、僕が使った2台目の楽器は白鍵の一つが壊れていて、本番始まってすぐに鍵盤の上面がはずれ、木がむき出しになった!僕は忙しく弾いている時だったので、てんてこ舞いになりながら、なんとかその破片を譜面台の上に置いた。(それに惑わされずに弾いていた友人の度胸は凄かった。)

修理途中のピアノやその部品などに囲まれた空間での演奏会は初めてだったが、カジュアルな雰囲気で楽しかった。お客様もワインを片手にリラックスして聴いていらしたようだ。一人50代の紳士が、目をつぶり渋い顔で頭を揺らしながら音楽に酔っていらしたのだが、丁度ピアノを弾く僕の真正面に座っていらしたので、それを見て一瞬吹きだしそうになってしまった(あまりに彼のノリが良かったのだ)!終演後お話しすると、オランダ出身の方で、お姉さまがフラメンコダンサー、ご本人もスペイン音楽は大好き、ということでとても気が合った。オーナーも喜んでくださり、素敵な花のプレゼントとお客様からの支援金(パトロネージュ)を渡された。
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「武満徹ピアノ作品集」発売
2007-10-18 Thu 00:00
8月6日にイタリアから帰ってから、僕にしては珍しく、一ヶ月以上ベルリンにいた。翌月フランスで初公開する武満プログラム(ドビュッシー、メシアン、ケージの曲を新しく勉強する他、フランス語で解説を準備しなければならなかった)と、10月の録音(アルベニスの作品CD2枚分)に向けて、集中して準備するつもりだった。だが、カンヌに発つ直前に引いた風邪が完全に治っていなかったのか、8月半ばにまた体調を崩し、一週間ほど寝込んでいた。

そんな中、この度発売された僕のニューアルバム、「武満徹ピアノ作品集」が送られてきた。内容が分かっていても、実物を手にするとワクワクした。世界一のカタログ曲数を誇るナクソスレーベルで、20世紀日本が誇る作曲家の作品を録音させていただいたことは実に光栄なことだった。しかもナクソス社のポリシーとして、「広範囲に渡って安価で市場に出し、廃盤にしない」とあるので、今後武満徹をライフワークの一つとして世界各地で弾いていきたいと願っている僕にとって、これ以上嬉しいことはなかった。それを意識して、今回即興と編曲ものを除いた全ソロ作品を、ほぼ年代順に収録した。「子供のための小品」はテレビ番組のイントロ用に作られ、ポップな作風が見られるので、他と別にしたかったのと、「リタニ」はデビュー曲「二つのレント」を40年ぶりに改作したものということで、武満さんの思い入れが深いと思われるこの曲でCDを締めくくりたかったということを、ここに記しておきたい。
将来は武満さんの他の作品(今回取り上げなかったピアノソロ曲の他、室内楽、オーケストラとピアノの曲)も是非録らせてもらいたいと思っている。

ところで、表紙の絵はトロント在住の画家、斉藤典子さんが僕の演奏録音を聴きながらイメージして描いてくださったもの。(斉藤さんとの出会いは日記昨年7月を参照)人それぞれ音楽から抱くイメージは違うと思うが、僕は斉藤さんの絵を見て非常に共感を覚えるものがあり、このような形でコラボレーションできたのも嬉しかった。この12月には、東京の「榎坂スタジオ」で斉藤さんの絵を数点飾り、武満さんへのオマージュコンサートをやる予定だ。詳しくはこちらhttp://blog-imgs-10.fc2.com/j/o/y/joyfulmusic/20071017100644.jpg

録音から一年が経った今、また新鮮な気持ちで武満さんの音楽を追求したいと思う。
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